平成6年秋、皇室へ梨を献上した母の思いを受け継いで、53歳から教職との両立を目指しつつ、週末農業で梨栽培に取り組んできました。

　収穫した梨を「おいしい」と喜んでくださる親戚や知人の方々の声と接するうちに「退職後は梨だけではなく、夫婦二人で栽培した農産物をお客さまに喜んで食べていただける宿を創りたいな」「湯梨浜町や鳥取県の見どころを県外や外国の人たちに紹介したいな」と、第二の人生に向けた夢が年々大きく膨らんできました。

　そして、定年退職を機に一念発起し、自宅をリフォームして、農家民宿「梨楽庵」をオープンしました。初年度は、友人や知人、修学旅行生や中国のご家族など60名の方々に宿泊していただき、大きなやりがいを感じました。

　しかし、コロナの影響を受け、この3年間は開店休業状態で、ほんのわずかなお客さまのご利用だけでした。幸いなことに、今春からコロナの感染状況が大幅に改善し、再びお客さまと出会える日々がやってきて、ワクワクしています。

　自家製の無農薬野菜や果物、日本海で獲れる新鮮な魚介類をアレンジし、旬を活かした妻の創作料理と、ダジャレをこよなく愛する私との会話も食事の一興として楽しんで、くつろいでいただけましたら、この上ない喜びです。

　平成の世が幕を閉じ、新しい令和の時代が始まって、早くも５年が経ちました。令和が始まった当初、令和がどのような世の中になっていくのか、誰もがはっきりと思い描くことはできませんでした。しかし、全ての人が幸せな世の中になってほしいと願っていたはずです。ところが、感染症が世界中に猛威をふるい、人々の不安感は極限に達し、確かな未来像を思い描くことが一層困難な時代となっています。

　想定外の出来事が続いた令和の始まりでしたが、このような時代を乗り切るためには、自分らしさを忘れず、あくまでも未来を信じて力強く歩んでいく決意が必要だと思います。そして、時には、心と体をほっこりといたわる時間と空間に身を置くことが大切ではないかと感じています。

　農家民宿「梨楽庵」は、豊かな自然環境の中で農業体験をすることで、田舎暮らしの素晴らしさを多くの人に知っていただくとともに、お客様との交流を通して、お互いが元気になれることを願って起業しました。

　梨楽庵がある湯梨浜町は、鳥取県の中央に位置しているため、県内の観光地へのアクセス面はとても充実しています。心づくしの海の幸と山の幸をご準備し、お客様にたくさん笑っていただき、楽しいひと時を過ごすことができるように、夫婦二人で努めたいと思います。天気の良い日には、日本海に沈む太陽が見事な夕焼け空を演出します。雄大な日本海をただ眺めているだけでも心が安らぎます。

　鳥取県は人口約54万人の小さな県ですが、海の国立公園である「山陰海岸国立公園」と、山の国立公園である「大山隠岐国立公園」を有し、全国的にみても、最も豊かな自然環境が残り、保護されている希有な地域です。柴犬の愛犬梨々（リリー）とともに、皆様のお越しを心よりお待ちしています。

 

梨楽庵主より