農家民宿 梨楽庵ブログ

何もない、ことはない。

梨楽庵

 都会から来た人たちや外国の人たちに自分たちが住んでいる田舎を紹介する時、代表者の挨拶で耳にしたくない言葉があります。「えー、ようこそ、お出でくださいました。ここには何もないですが、…。しかし、えー、緑豊かな自然やきれいな空気があります。人情も豊かです。えー、……。」

 何もない、という挨拶を聞く度に私は悲しくなってしまいます。「人口約54万人、全国で最も人口の少ない鳥取県ですが、県内各地には「都会にはない」ものがたくさんありますよ。都会の人たちにとっては、田舎にしかない、心を引きつけられる宝物がたくさんあるのですよ。」私の腹の中では、何もない、を聞く度に、へそ曲がり虫が独り言を発し始めます。

 「灯台下(もと)暗し」という慣用句があります。灯台の真下は薄暗くて宝物が落ちていても気づかないのかもしれません。しかし、宝物はどこか遠くにあるのではなく、田舎の地元にも必ずあるのです。きらびやかな大都会の生活に憧れる若者たちの感情は、将来的にも変わりません。それは誰もが持ち得る青春時代特有の激情だからです。

 大切なことはリピートできる地元づくりではないでしょうか。都会で就職し生活を始めた若者たちの中にも、ミスマッチを後悔している人もいます。地元の会社に就職し、親元近くで生活し、穏やかな家庭生活を築きたかったと思い悩んでいる若者も多いのです。都会で生活を送る中で、地元愛に目覚めた若者が切望していることは、Uターンを決意できる受け皿が故郷にあることです。

 受け皿とは、子育てに必要な魅力的な教育環境と安心して働ける職場環境です。地元の行政や企業が10年先、いや、30年先を見据えて、粘り強く準備していくことが急務ではないでしょうか。鳥取県も自然災害の猛威から逃れることはできませんが、世界の中でも最も恵まれた国が日本です。そして、日本の中でも最も恵まれた自然環境に包まれ、穏やかな人柄の県民性があるのが鳥取県です。鳥取県で人生設計をしたいと夢みる人たちは、今後、ますます増えてくると確信しています。

*写真のカエルさんが、自己紹介したいと申していますので、お聞き下さい。

 「私は、梨楽庵のスタッフの一人、いや、一匹の“かんガエル”です。出身地は京都市の嵐山のお店です。庵主が京都旅行の途中でお店に立ち寄った時、見初められて梨楽庵に就職することになりました。

 私のお気に入りのポーズは、ロダンが作成した『考える人』です。な・の・で、お客様がお越しの際には、考える人をイメージしてお迎えのポーズを決めているのですが、……。みんなが言うんです。あれは考える人ではなく、「居眠りしているカエルだと」まあ、言いたい人には言わせておきましょう。

 私だって、考えてるんです。10月から来年の4月までは、まだ予約が全く入ってないんです。庵主も奥さんも全く気にしていないようですが、私はハラハラドキドキ、梨楽庵の将来を心配して、お客様がいらっしゃらない日にも、考えるポーズを決めて、考えているのです。以上で私、“かんガエル”の自己紹介を終わります。」