砂丘そば
風景

昭和40年代後半から昭和50年代前半に高校生活と大学生活を県内外で送り、社会人になってからも山口県の私立高校で教員生活を2年間送っていました。そのため、鳥取に帰省する時は、山陽本線や山陰本線や在来線の鉄道を利用していました。
今と違って、本線から在来線に乗り換えるには待ち時間が長かったため、待ち時間を利用して、「駅そば」「駅うどん」などの軽い食事が旅の楽しみの一つでした。各地の駅のプラットホームには、小さなお店があり、そばやうどんの小さな暖簾がゆれて、「こちらにおいでよ。」と手招きしていた様子がなつかしく思い出されます。
鳥取駅構内には、今から69年前、昭和29年創業の「砂丘そば」があります。私の日常の生活圏は中部地区だったので、利用する機会は少なかったのですが、故郷観光に目覚めるようになってから、時々、食べに出かけるようになりました。砂丘そばの最大の魅力は、「安くて、早くて、うまい!」この3拍子をガッチリと持ち合わせていることです。
430円の安価な生麺のそばは、あっと言う間にゆで上がり、着席して1分以内に目の前に現れ、丼の中ではゆらゆらと香ばしい香りの湯気が立ち上っています。麺の上にちょこんと載せられているのは鳥取名産の「あごちくわ」です。お店のこだわりの「出し汁」が麺に絡みつき、食べると深みのある味が口の中に広がります。食べ終わると満足感で満たされます。
トッピングもいろいろあります。この日は170円のかき揚げをプラスして、プチ贅沢感を味わいました。かき揚げの中に隠されていた小さなホタテ貝が美味でした。関西方面や岡山方面から特急列車を利用して鳥取駅にご到着後は、「砂丘そば」で腹ごしらえをしてから、山陰の旅に出かけてみてはどうでしょうか。「砂丘そば」は、一推し、二推し、三推し、です。
5年前に梨楽庵を起業した時の最初のお客様は、広島に嫁いだ姉の大学時代の友人たちでした。三重県在住の3人のおば様たちは、大阪から特急「スーパーはくと」を利用して、お昼前に鳥取駅に降り立ちました。改札口の前で梨楽庵のロゴマークを掲げてお迎えし、案内したのが「砂丘そば」でした。「砂丘そば」を食べ終えた後、なつかしい昭和の雰囲気を体感したおば様たちを連れて、梨楽庵企画の1泊2日の特別ツアーが始まったのです。
ツアーが終了した翌日の午後、おば様たちは倉吉駅から特急列車に乗り込み、無事に自宅に戻られました。それから数日後にお礼状が届きました。お葉書には、「決して忘れることのない思い出となっている」と、もったいないお言葉が書かれていました。第1号のお客様から頂いたお言葉が私たち夫婦に希望の光となって勇気を与えて下さったのです。
