スーパースター
梨楽庵

12月6日(火)米子駅から徒歩3分ほどの所にある米子コンベンションセンターの入り口には、開場前から50m以上もの長い行列ができていました。鳥取県内には鳥取市、倉吉市、米子市にそれぞれ一カ所大きなイベントホールがあるのですが、これまで一度もこんな光景を目にしたことはありません。近くにいたご年配の方も「これまで一度もこんなの見たことないよ。人生で初めてだなあ」と驚きの声をあげていました。
観客が開場を待ち望んでいた人物は、松山千春さんです。チケットは全席指定席なのですから開場前から並ぶ必要はないと思ったのですが、おそらくは、終演後は大混雑になりますから、開演までの30分の間にCDや記念グッズ等を買い求めたい人たちが並んでいたのだと思います。
客席は当然、満席です。幕が上がり、大音響と煌めくレーザーライトの照明で演出された舞台にお目当ての人が現れ歌い始めると、ホール内は観客の温かい大きな拍手で包まれました。松山千春さんは私より3つ年上の同世代。『旅立ち』でデビューするやいなや注目を浴び、『季節の中で』が爆発的な大ヒット曲となり、またたく間にスーパースターの座に駆け上がりました。私が青春時代に憧れた歌手の一人なのです。
米子でのコンサートは8年ぶり、今回が2回目とのことでした。松山千春さんのコンサートは一度もチャンスがなく、今回逃すともう二度と出会えないかもしれません。そんな思いで妻にチケットの購入を頼んだのですが、ネットでは既に完売。鳥取市内には取扱店はなく、米子市のプレイガイドに電話で問い合わせると、数枚残っているけど電話予約はできないとの返答でした。今日は平日。しかし、週末になると間違いなく完売してしまうだろう。よし、今から米子に直行だー。妻も了解し、ダメ元覚悟で車を走らせ、幸運にもチケットを手に入れることができました。
コンサートは2部構成。第一部は恋の歌を中心に熱演し、第二部は絶頂期の名曲の数々を熱唱してくださいました。今回すばらしい演出だと感心したことがあります。舞台上の空間部分に大きな文字で歌詞が映し出されているのです。ほとんどのコンサートの伴奏曲は楽団員の大音響が流されるので、歌手の歌声が聞き取れないことがあります。TVや映画では字幕は当たり前なのですが、初めての体験でした。私たち年配の観客対応なのかわかりませんが、松山千春さんの歌声に聞き惚れながら歌詞もじっくりと味わうことができました。
彼のコンサートの魅力は大ヒット曲の名曲を聴くことだけではありません。曲の合間に語られる、独特の口調の人情話が観客を魅了するのです。貧しかった子供時代のこと、病魔に苦しんだ幼児期のこと、大好きだったお姉さんの闘病生活のことなど、松山千春さんの口許から発せられる一言ひとことを聞き逃さないために、満員のホール内はシーンと静まりかえっているのです。まさに人情話を得意とする落語家の名人芸のようでした。
超一流の楽団員の演奏は冒頭からずーっと熱演続きです。信頼する楽団員の熱演を背に受けて、松山千春さんは20代の頃とはひと味違った円熟した歌声で歌い続けます。絶唱と絶妙な語り芸にグイグイと引き込まれた満員の観客は、曲が終わると大きな拍手と歓声で感動の喜びを舞台に届けます。すると、観客の熱波を浴びて、主役はより一層ボルテージを上げるのです。第二部に入る頃には、舞台と客席の一体感は最高潮に達していました。
最後の一曲は、『大空と大地の中で』を観客も一緒に歌って幕が下りました。幕が下りても拍手は鳴り止まず、最後の力を振り絞り、アンコール曲を披露してくださいました。米子の、愛称「ビッグシップ」で開催された松山千春コンサートは大成功で幕を閉じました。松山千春さんは、この日は超ノリノリで上機嫌。今回は8年ぶりの米子開催だったのですが、2024年か2025年のいずれかの米子市開催を約束してくださいました。よーし、もう一度出会うぞ!次回は前の方の席がいいなあ。
