それぞれの初心
梨楽庵

オーナーはカープファンです。野球が大好きです

もみじ饅頭の詰め合わせを知人からいただきました

広島までは行けないので、奥さんにお好み焼きを作ってもらいました

広島風お好み焼きは、焼きそばを入れます

青のりとマヨネーズをかけたら完成です

菊池選手を出迎えるカープの選手たち

まるで優勝の瞬間を見ているようです

新井監督だからこそ、選手とハグできるのでしょう

新井監督は、ひまわりのように明るい監督です
今から8年前の現職時代のことです。平成28年の11月に広島に出張する機会がありました。広島は私が大学生活を過ごした都市であり、広島市民球場でアルバイトをした経験もあり、思い出が詰まった第二の故郷です。この時の出張では忘れ得ぬ収穫がありました。
一つは、武家茶道家元の上田宗冏(そうけい)さんの講演を聞くことができたことです。講演の中で、『風姿花伝(ふうしかでん)』に書かれている、「初心忘るべからず」という世阿弥(ぜあみ)の有名な言葉を紹介されました。風姿花伝の後に書かれた『花鏡(かきょう)』には、初心には3つあると、説明を付け加えられました。3つとは、「是非の初心忘るべからず」「時時の初心忘るべからず」「老いの初心忘るべからず」の3つでした。
教育で例えると、是非の初心とは、初任者の初心です。がむしゃらにがんばる気持ちです。時時の初心とは、中堅教員の初心です。少しマンネリになりかけた時に振り返る初心です。老いの初心とは、管理職の立場にある人にも忘れてはならない初心があるという意味ではないかと私は受け止めました。
日本将棋連盟会長の羽生善治9段は、世阿弥の名言を新聞のコラムで次のように解説していました。「これは物事を始めた時の気持ちを大切にする意味のみならず、人生の様々な段階の初心を忘れてはならないということだと理解している。将棋を覚えた時、プロの道を志した時、棋士となって将棋の世界の奥深さを知った時。それぞれの初心が進歩を続ける上で大切なのだと思う。」
収穫の2つ目は、お好み焼きから学んだことです。広島出張は3日間の日程でした。私はその3日間に3回お好み焼きを食べました。人生初めてのことです。なぜ3日間も続けて食べても飽きなかったのか、理由は何だったのか、真剣に考えてみました。わかったことは、お好み焼きづくりには人を引きつける魅力があるからだ、ということでした。
お好み焼きの粉の生地を鉄板に落とし生地を丸く広げる導入場面には、ワクワク感があります。熱々の鉄板が食材と触れることで発する音もワクワク感を高めます。展開場面では、生地が焼き上がるとたっぷりとキャベツをのせて肉や卵やそばを加えてひっくり返します。お好み焼きの宙返りがピタッと決まると、その職人技に拍手をしたくなります。最後のまとめの場面では、刷毛でたっぷりとたれを塗り、青のりとマヨネーズで模様を描き仕上げます。出来たてのお好み焼きが目の前に運ばれると生唾が出てきます。
お好み焼きづくりを観察していると、授業もお好み焼きづくりと同じだと感じました。基本となる導入、展開、まとめの場面がしっかりと準備されていれば、子どもたちに学ぶ力をつけることができるのです。そんな授業に出合った子どもたちは、きっと明日も授業を食べたい、いや受けたいと思い、飽きることがなくなるのではないかと感じました。
収穫の3つ目は、広島カープが市民球団としてしっかりと根付き、広島市民に愛されていることを知ったことです。出張中は移動手段として徒歩と「広電」の愛称で呼ばれる、路面電車が走っている広島電鉄を利用しました。リニューアルした電車に乗って驚きました。天井にはカープの選手の拡大写真が貼られていました。中づり広告には、「カープ優勝おめでとう」の広告が車輌の端から端まで何枚もつり下がっていました。つり革にもカープグッズが付けられていました。この年はカープが25年ぶりにリーグ優勝した年でした。
極めつけは車内放送でした。電車が停車する前に車内放送があるのですが、放送の声がカープの選手の声なのです。停車駅ごとに選手の声が変わります。終点の広島駅の直前にはこんな放送が流れました。「広島東洋カープの新井貴浩です。次は終点の広島駅です。お降りの際には、お忘れ物のないようにご注意ください。マツダスタジアムにお越しの際には、熱い応援をお願いいたします。」
車内放送からカープの選手の声が流れてくると忘れ物をしないようにより一層気をつけようと気を配ると思います。選手の声を聞くと、カープ愛も高まります。「広電」に乗車して、カープと広島市民のつながりや連携の深さを再認識しました。
8年前に選手だった新井貴浩さんは昨年監督に就任し、チーム力を引き上げ、2位でシーズンを終えられました。今年は春先の野球評論家の低い評価を跳ね返し、現時点で首位をキープしています。チームが優勝する時は、そのシーズンを振り返ったときに、優勝へとつながる決定的な試合があります。一昨日、8月14日にマツダスタジアムであった対DeNAとの試合がその試合です。
9回表までは1対3で敗戦濃厚でしたが、菊池選手の逆転サヨナラホームランが飛び出し、一振りで試合を決めたのです。ホームベース付近で菊池選手を出迎える選手たちの歓喜の姿は、まるで優勝したかのようでした。戦いはまだまだ続きます。最後の最後まで接戦が続くことが予想される今シーズンですが、一昨日の試合で劣勢を跳ね返し、劇的な勝利を手にした選手たちは、「このチームなら優勝できる」との確信を得たのではないでしょうか。
新井監督はカープの監督となってまだ2年目にも関わらず、プロ野球界の監督が誰一人なし得たことのない新たな監督像を追求しているように感じられます。常に前向きで、肯定的な評価で選手たちを鼓舞する新井監督なら、必ずや優勝へと導いてくれることでしょう。新井監督、❝監督としての初心❞を胸に秘め、明日からもリーダーシップを発揮されてご活躍ください。ファンは信じて応援を続けます。
