山陰海岸ジオパーク(勝部地区)
風景

鳥取市青谷町にある「御滝山 “不動滝霊場”」
ジオパークに指定されている兵庫県北部の但馬地区について3回連続で紹介しました。今回は地元にもどり、新たなジオスポット「勝部地区」を紹介します。鳥取市青谷町内のジオスポットについては、すでに“長尾鼻”と“夏泊海岸”で紹介していますが、町内にはまだまだ見所があるのです。
勝部地区は鳥取市青谷町の山間部にある6つの集落の地区名です。現在、青谷町は平成の大合併により鳥取市の行政区域に含まれています。合併前は因幡国の最も西側に位置する単独の町でした。峠を越えると、すぐ西側には合併前の泊村(現在の湯梨浜町)があり、青谷と泊は因幡国と伯耆国の境界に位置していました。

勝部地区のジオスポットも、長尾鼻や夏泊海岸と同じく、約160万年前に鳥取県中部の中国山地付近にあった火山の大噴火による溶岩流が形成したものです。日本海に流れ出る途中の台地状の溶岩地形が勝部地区周辺の地形を形作っています。

赤い四角の範囲が「勝部地区」です
鳥取市青谷町内の溶岩は主に“安山岩”です。鉢伏山(標高513.9m)付近が約250mと最も厚く分布しているので、“鉢伏山板状(はちぶせやまばんじょう)安山岩”と名付けられています。板状の割れ目(板状節理)が発達しているのが特徴です。
火山の噴火によって流れ出た膨大な量の溶岩は、日本海に向けてゆっくりと流れ下り、当時の大地を埋め尽くしました。溶岩が冷え固まった後は、長い時間をかけて溶岩の周辺部が浸食され、現在の谷になったと考えられています。
硬くて浸食されにくい安山岩の溶岩は、海抜200m~300mのなだらかな台地状の地形を形成しました。その後、台地の上を流れる小規模な河川は、急峻な崖の所では滝となり流れ落ちたのです。勝部地区には3つの滝があり、古くから霊場として知られ、信仰の対象となっています。
青谷に“不動滝”という有名な滝があることは聞き知っていて、数十年前に一度だけ訪れたことがありました。今回はジオパークに導かれ、取材のために訪れました。梨楽庵からは車でわずか20分ほどです。無料駐車場のすぐ目の前が不動滝です。
不動滝は3つの滝の中心的な滝で、“一ノ滝”と呼ばれています。今夏は日照り続きだったので、水量が少なく感じられました。しかし、滝のまわりは切り立った安山岩の岩壁と巨石に囲まれ、推定樹齢300年の巨木のヒノキや鬱蒼とした広葉樹に覆われ、まさに神域でした。

“湯原滝”は不動滝から徒歩約5分で到着します。不動滝前の道路を2分ほど歩いて上ると湯原滝と“妙円滝”の入り口の表示があります。そこから遊歩道をしばらく歩いて下ると湯原滝に到着します。湯原滝は水量も多く、鬱蒼とした樹木におおわれた空間は、霊場の雰囲気を醸し出していました。

“妙円滝”にも行きたかったのですが、遊歩道には樹木が生い茂り、立ち入り禁止となっていました。何とか見えないものかと入口の表示があった場所にもどり、坂道を登って行くと、谷間の樹木の間から水が流れ落ちていました。妙円滝だと思われますが、樹木に覆われ、滝だとは断定できませんでした。

立ち入り禁止が解除されたら眺めてみたいです

妙円滝です。ジオパーク協議会の資料から転載しました
勝部地区の見所は滝だけではありませんでした。地区の入り口付近には農村の生活体験を味わうことができる「かちべ伝承館」があり、この施設を拠点に散策を楽しむことができるのです。伝承館からいただいた探訪マップを見ると、不動滝コースと八葉寺(はっしょうじ)コースのモデルコースがありました。
今回、新鮮な感動を覚えたのは、八葉寺コースでした。伝承館前の県道付近の勝部川と八葉寺川が合流する地点の対岸には、断崖絶壁の採石場跡があり、そこは鉢伏山板状安山岩の岩石が地表に現れた大露頭となっていたのです。

探訪マップの地形図の等高線から判断すると、断崖はおよそ100mの絶壁です。最上部には土質の地層が見られ樹木が生えていますが、大部分は安山岩の溶岩壁なのです。山や丘が樹木に覆われていると、その内部がどうなっているのか考えようともしません。しかし、この岩壁を目の前にすると、火山噴火が想像を絶する規模だったにちがいありません。
溶岩壁を後にして、徒歩1分ほどの所に「建山(たてやま)神社」がありました。歴史は古く、推古12年(608年)、ヤマタノオロチ退治で有名な須佐之男命(すさのうのみこと)が祭神として祀られ、当時は妙見社と呼ばれていました。

神域を守護しているのは幕末の名石工“川六(尾崎六郎兵衛)”が制作した狛犬(こまいぬ)です。川六はこの地域で活躍し、鳥取市西部地区を中心に狛犬や石灯籠がたくさん現存しています。後ろ足を立てて腰を突き上げ、前足は立てず、相手を威嚇するように身構えた姿勢が川六の狛犬の特徴です。

建山神社は低山ながらも、現在の神社名のとおり、山頂部に建てられていました。鳥居をくぐった地点では神社は見えませんが、171段もある石段が真っ直ぐ上まで続いているのです。こんな石段を登るのは初めてでした。さすがに一気に登り切ることはできませんでした。
さらに驚くことは、石段の途中の両脇には、推定樹齢500年の巨木の大杉が参道の守護神のように鎮座しているのです。推古12年(608年)当時とは様相が異なっていると思いますが、巨木の間に一直線の石段を作ろうと考えた地域の先人たちの発想に感服しました。

参道にこんな巨木が2本もある神社が他にあるのでしょうか

次に向かったのが、子守神社です。建山神社のすぐ近くを流れている八葉寺(はっしょうじ)川に沿って1分ほど上流の所にありました。子守神社は名前のとおり、子供の守護神や安産の神様として信仰されています。子守神社での驚きは、鳥取市指定の天然記念物が境内に2つもあることでした。

一つは、推定樹齢500年の大イチョウです。こんな巨木のイチョウなんて見たことがありません。二つ目は、高さが30mほどもある安山岩の溶岩壁の下の部分が浸食と風化によってえぐり取られ、大きな岩窟ができているのです。中に入ってみようかな、と思いましたが、岩壁が落ちてきたら命にかかわるので自重しました。2つの天然記念物は必見の価値があります。

山陰海岸ジオパークに魅了されて、ブログ発信のために調べていると、次々と新たな発見があり、学ぶことの楽しさを感じています。“生涯学習”という言葉がありますが、今の自分の学びの姿が言葉の真の意味なのかもしれません。身近な所に、まだまだ未知との遭遇がありそうです。
