農家民宿 梨楽庵ブログ

湯梨浜町もジオパークかも?

風景

右手奥の電波塔の見える平坦な山が「鉢伏山」(標高513.9m)です。旧東郷町側からの眺めです

 昨年から山陰海岸ジオパークに魅せられて、8月のブログはジオパーク特集になってしまいました。他の話題はないのですか?とお叱りを受けそうですが、最後にもう一つだけ、ジオパークについてお付き合いいただきたいと思います。

 今のところ、鳥取県内の中部地域や西部地域はジオパークに認定されていませんが、個人的には特別に重要で貴重な地質遺産の観点からみると、湯梨浜町内はすっぽりとジオパークに認定されるだけの価値があると感じています。

 その理由は、すでにジオパークに認定されている青谷地域の海岸線は青谷で途切れているのではないからです。古代の火山活動によって流れ出した溶岩地形は青谷のすぐ西隣の湯梨浜町泊地区へと続いているのです。

   鉢伏山は旧青谷町と旧泊村との境界の山です

 因幡国を峠越えすると、すぐ西隣にある集落が小浜地区です。小浜の西側には“尾後鼻(おごばな)”と呼ばれる海に突き出た小さな岬があります。この尾後鼻の海岸や小浜の砂浜には黒っぽい色をした巨岩が転がっています。

樹木が見える所が「尾後鼻(おごばな)」(小浜地区)

 この岩石は玄武岩の溶岩です。鳥取市青谷町の亀尻に典型的な玄武岩があるので、“亀尻玄武岩”と呼ばれています。かつては、石材として切り出されていたようです。つまり、この玄武岩は今から300万年から500万年前に活発な火山活動があった時代に流れ出た溶岩なのです。

 尾後鼻は小浜の砂浜の東側に広がっている石脇海岸から眺めると、“海岸段丘”の地形であることがはっきりとわかります。現在は段丘上には太陽光発電のパネルが敷き詰められています。

海面下にあった平坦な地形が地殻変動によって隆起しできたと考えられます

 石脇の砂浜の東側には鳥取県栽培漁業センターがあります。この漁業センターから泊漁港に通じる海岸道路の崖下にも溶岩地形が見られます。ここは“後島(うしろじま)”と呼ばれています。

 海岸道路は山頂へと続き、グラウンド・ゴルフの聖地“潮風の丘とまり”とつながっています。旧泊村で誕生したグラウンド・ゴルフは、今や大人気で、年間を通じて各種大会が開催されています。

 泊漁港東側から見た「甲亀山」(標高87.3m)

 グラウンド・ゴルフ場として開発された場所は、甲亀山と呼ばれる標高87mの低山で、斜面には小さな畑が広がっていました。この甲亀山の崖下が後島です。

 後島は夏場の子どもたちの遊び場でした。イガイを採ったり、岩ガキを採ったり、魚釣りをしたり、子どもにとっては後島は最高の遊び場であり、その地形が火山の大噴火による溶岩によってできたなんて考えることもしませんでした。(注1)

 “後島”の左上の道が「潮風の丘」へ通じています

 調べていると新たな発見がありました。甲亀山の海側は日本海の荒波によって浸食された断崖絶壁となっていて、“海食崖”と呼ばれる地形です。地表に現れた海食崖の岩石も小浜と同じく“亀尻玄武岩”でした。

崖上の車道からも眺められますが、溶岩の上を歩くと非日常感を味わうことができます

身近な、手に届く所に別世界があるのです。子どもの頃とは違った感覚でこの景色を眺めています

 しかも後島の海食崖は、3つの溶岩の地層が重なった珍しい地形だったのです。画像1は、上部は硬い性質の玄武岩で、下部はガスが抜けたあとの孔(あな)が無数に見られる性質の玄武岩です。時代の異なる二つの玄武岩に挟まれた地層が“火山弾”などの破片を含んだ火山噴出物からできた岩石の地層です。

〈画像1〉緑色の草が生えた地層を上と下の性質の異なる玄武岩が挟んでいます

  画像1の裏側の景色です。東側から見ています

 後島にはもう一つ見所があります。海食崖の下部から海に向かって平坦な玄武岩の地形が見られます。荒波と風化作用によって浸食されて形成された地形で、“波食棚(はしょくだな)”と呼ばれています。

 見所は、この波食棚に“甌穴(おうけつ)”がたくさん形成されていることです。甌穴とは、くぼみに入った石が海の荒波によって回転し、岩石を削ってできた穴のことです。(注3)

     白っぽくなっている所が甌穴です

穴に埋まっ硬い岩石が波の力によって回転し、甌穴をつくります

  岩石は挟まっていませんが、大きな甌穴です

 溶岩地形はさらに西側の海岸線に沿って、宇谷地区、宇野地区、橋津地区の海岸にも見られます。宇谷地区は後島と同じく“亀尻玄武岩”の岩石海岸です。宇野地区は、東郷池の西側にある御冠山(みかむりやま)から噴出した“御冠山安山岩”の岩石海岸です。そして、橋津地区は、“鉢伏山板状安山岩”の岩石海岸です。

  宇谷地区の海岸です。後島と同じ玄武岩です

大きなクレーンのようなものを載せた船の後ろが「甲亀山」です

宇野地区の海岸は“御冠山(みかむりやま)安山岩”の溶岩でできた海岸です

海まで流れ着いた溶岩が荒波に押されて盛り上がったのでしょうか

当時の海岸線はもっと奥だったはずです。海に辿り着いてからも膨大な量の溶岩流が海の中へと流れ込んだのでしょうか

橋津地区の海食崖です。大昔はここは海だったのです

荒波によって浸食し削り取られた“海食洞”です。岩石は“鉢伏山板状安山岩”です

 湯梨浜町の南東方向には“鉢伏山”があり青谷町との境界になっています。この鉢伏山から噴出した膨大な量の溶岩は、青谷町側だけでなく、湯梨浜町側の日本海に向かっても流れ下ったのです。(注4)

 右側の頂上が平らな山が「鉢伏山」中央が東郷池、東郷池の左側奥の冠のような形の山が「御冠山(みかむりやま)」です

 溶岩が冷え固まった後は、長い時間をかけて溶岩の周辺部が浸食され、現在の谷になりました。硬くて浸食されにくい安山岩の溶岩は、湯梨浜町側にも海抜200mから300mのなだらかな台地状の地形を形成し、その後、台地の上を流れる小規模な河川が急峻な崖の所では滝となり流れ落ちたのです。

 それが湯梨浜町内にある“今滝(いまだき)”と“不動滝”の2つの滝なのです。鳥取市青谷町と湯梨浜町では現在の行政区は異なりますが、大自然が造り出した地質からみれば、同質の環境下にあったのです。

安山岩の断崖を流れ落ちる“今滝(いまだき)”およそ44m、梨楽庵から車でわずが10分で行けます

安山岩の断崖から流れ落ちる“不動滝”(およそ32m)、今滝から不動滝までは車で3分ほどです

 湯梨浜町のシンボルの一つである東郷池は湖山池と同じで、海だったところが砂浜によってせき止められ、海水も流れ込む汽水湖であり、大変貴重な自然環境が守られています。黒いダイヤと呼ばれるシジミも豊富に水揚げされています。

 また、東郷池は池の中から温泉が噴出するという他地域にない特色があります。東郷池の周囲には弥生時代の遺跡や古墳時代に造られた古墳が数多く残っています。何と古墳の石室の製作には、板状安山岩が用いられていたのです。戦国時代の山城跡も多く残っていて、歴史的にも価値ある地域なのです。

“鉢伏山板状安山岩”です。梨楽園から見つけました。割れ目から岩石がはがれます。

 今はまだ、ジオパークには認定されていませんが、専門的な方々が調査をされて、ガイドの育成や地域振興策などの継続的な取り組みを始めれば、湯梨浜町内もジオパークとして認定され、観光客の誘客にも大きく貢献するのではないかと考えています。

 専門性の少ない私見なので、一笑に付されるかもしれませんが、湯梨浜町の新たな誇りの一つになるのではないかと密かに期待しています。

(注1)現在は漁業権がありますので、個人で勝手に魚介類を採ることはできません。

(注2)参考文献…『鳥取地方の“石ころ”物語』(山中巌著)

(注3)急流によって、河川の岩石が削られてできる場合もあります

(注4)後島の地質は主に“亀尻玄武岩”ですが、甲亀山は“鉢伏山板状安山岩”の地質です。

*参考文献…『泊村誌』『東郷町誌』『新修羽合町史』『青谷町誌』『鳥取県のすぐれた自然(地形・地質編)』鳥取県衛生環境部自然保護課発行