二十世紀梨の収穫
梨楽庵

梨の栽培に本格的に取り組み始めて、今年で15年目になります。栽培歴が10年以上になると、ベテランの域に達して、梨栽培も楽になったのではありませんかと、お思いの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
違います。マンネリに陥る気持ちにはなりません。梨栽培にかかわらず、農作業は一年一年が勝負です。毎年自然条件が異なり、自作の梨栽培暦を作成していても、年により、一週間から10日ほど、作業日がずれることがほとんどです。
一昨年は餌(えさ)不足のためか、カラスの活動が早まりました。二十世紀などの青梨は、病気を防ぐために2回袋かけをします。1回目は“小袋かけ”、2回目は“大袋かけ”と呼びます。
例年なら6月初めに大袋かけをして、梨の実が大きくなった7月上旬ごろになると、カラスが大袋を破り梨の実を食べ始めるのですが、何と一昨年は大袋をかけた直後から、袋を破り始めたのです。そのために、1ヶ月前倒しして、あわててカラス対策を行いました。
カラス対策は果樹園の全部に防鳥網をかけます。専業農家の方は栽培面積が広いので果樹園全部を覆うことはできませんが、梨楽園は梨の木の本数が多い所で5本なので、何とか覆うことができます。そのおかげで、カラスによる被害は全くありませんでした。
今年も昨年同様に、酷暑と雨不足が悩みの種でした。6月下旬から8月上旬の立秋までの間、降雨があったのはわずか2日です。立秋以降に4日間まとまった雨が降りましたが、野菜には適量でも果樹にはまだまだ不十分でした。
幸いなことに、梨楽庵の果樹園には小さな谷川が流れています。この谷川の水をタンクに貯めて、果樹園の地面の乾燥状況を判断しながら散水することができるのです。年中枯れることがない谷川があったからこそ、父母の時代には米づくりも行っていたのです。
近年、あらゆる分野で過去に起きたことのない事態が発生すると、“想定外”の言葉が使われるようになりました。梨楽園でも酷暑と雨不足以外の想定外が4月に発生したのです。それは毛虫の大発生でした。
春先に発生する毛虫の防除対策として、例年通りの農薬散布を行ったのですが、散布後も明らかに毛虫が目視できるのです。「いつもと違って今年は何か毛虫が多いなあ」と、感じてはいたのですが……。
想定外の事態に気づいたのは、無事に交配が終わって梨の実の赤ちゃんが成長し始めた頃でした。果樹園内のあちこちの親指大の梨の実を毛虫がかじっているのです。
梨の実の赤ちゃんは一つの花芽から10数個実ります。そのうちの1個だけ選んで小袋をかけて育てるのですが、場所によってはほとんどの実がかじられていたのです。
毛虫の大発生の原因は何だろうと熟慮してみました。私見ですが、冬場の降雪量の減少と気温の高さが影響しているように思います。1月にも2月にも大雪の日はあったのですが、一度きりで数日で解けてしまいます。
大雪による日常生活の不便さが早めに解消するのはいいのですが、降雪量の少なさが毛虫等の害虫の生育環境を良くしているのかもしれません。さらには1月から3月にかけての冬期と早春の気温上昇も害虫にとっては好都合な環境なのかもしれません。
ハラハラしながら何とか小袋かけを終えたものの、収穫量の大幅な減少を覚悟しなければなりませんでした。さらに、もう一つの想定外は、収穫直前の台風の発生でしたが、暴風対策を施し、落下梨を最小限に留めることができました。
近年、夏は連日猛暑です。今年のような酷暑が続くと、何らかの影響がでるのではないかと心配です。梨の木に「大丈夫ですか?」と問いかけても、黙して語りませんが、この酷暑で年々体力を消耗しているのかもしれません。人間は屋内ならエアコンで、屋外ならミストシャワー等で対応できますが、果樹園には取り付けできません。
二十世紀梨の最大の強みは“酸味と甘味のバランスの良さ”です。この特性は、通常の秋ならば、朝晩の冷え込みが始まる9月上旬頃から発揮されます。私の感覚では最低気温が22℃以下にならないと美味しい梨は生まれないように感じています。梨づくりの最後の決め手は、やはり自然の力なのです。
収量減がありながらも、何とか進物用の梨を準備することができました。遅くとも今週中には親戚、友人、知人の方たちにお届けすることができそうです。喜んでいだだけると大変うれしいです。
今はほっと一息ついていますが、来年度以降、酷暑に対してどんな対策を取ればいいのか、夏休みの宿題が未解決のまま残ってしまった中学生の心境です。

収穫した梨は梨楽庵の車庫で箱詰め作業をしています
*毛虫の大発生や極暑等の影響で最盛期より進物用の梨の収量が半減しています。昨年度までお届けさせていただいた方へお届けできない状況となってきています。楽しみにされていた方には誠に申し訳ありませんが、ご容赦をお願いいたします。
