中国庭園“燕趙園”
梨楽庵

この燕趙門(えんちょうもん)が正面入り口です
国が指定する国立公園は、鳥取県には2カ所あります。既にブログで紹介している山陰海岸国立公園と大山隠岐国立公園です。鳥取県が指定している県立公園は、東部、中部、西部に1カ所ずつあり、中部地区には、「三朝東郷湖県立自然公園」があります。
三朝東郷湖県立自然公園の中でも、風光明媚な場所のひとつが、東郷湖周辺地域です。この東郷湖の南側の畔に平成7年(1995)、日本最大級の本格的な中国庭園が建設されました。日本最大級の中国庭園が、なぜ鳥取県に造られたの?と不思議に思われる方も多いのではないでしょうか。
実は、“燕趙園(えんちょうえん)”は、鳥取県と中国の河北省との友好提携5周年を記念して建設されたのです。紀元前475年~紀元前221年の間、中国は戦国時代を迎えます。
この時代は、秦(しん)・楚(そ)・燕(えん)・斉(せい)・趙(ちょう)・魏(ぎ)・韓(かん)の7つの強国が争った時代です。そして、現在の中国の首都北京を含む河北省の北部は「燕」の国に属し、南部は「趙」の国に属していたことから、庭園名が“燕趙園”と名付けられたのです。
燕趙園は中国の歴代の皇帝が好んだ造園方式が取り入れられています。しかも、設計から資材の調達、加工まで全て中国本土で行い、一度仮組みしたものを解体して日本に運び、燕趙園の現場で中国人の職人が再度組み立て建設しています。

燕趙園の中心施設の「華夏堂(かかどう)」
屋根瓦には、皇帝だけが使用できる「黄色の瑠璃瓦(るりがわら)」が使用され、建物の各所に、皇帝を象徴する「龍」の装飾画をはじめ、2000以上の装飾画が中国人の画師によって描かれていて、見所の一つになっています。
燕趙園では、28の風景を楽しむことができます。一推しは、第17景「一覧亭」です。この場所からは、園内全体を見渡すことができます。

中央の高い建物が「一覧亭(いちらんてい)」
さらには、燕趙園の周囲は、北方には東郷湖が広がり、東、南、西の三方向には山々が横たわっているため、湖と山々の借景を取り込んだスケール抜群の庭園美を眺めることができるのです。

東郷湖の対岸に「はわい温泉」があります

三方の山々と湖を借景とした庭園は、世界中で“ここだけの景観”かもしれません
北京の郊外には、世界遺産に認定されている「頤和園(いわえん)」と呼ばれる清朝時代の離宮庭園があります。庭園の4分の3が人工池だということです。現地を訪れたことはありませんが、もしかしたら、広大な人工池に囲まれた頤和園(いわえん)の景観が東郷湖を含む周囲の景観と類似していたために、燕趙園の建設地に選ばれたのではないでしょうか。
燕趙園は「日本最大級の本格的な中国庭園」という表現で紹介されますが、最大級が重要なのではなく、いわゆる中国の「風水」の考え方から捉えた時、東郷湖周辺一帯の景観が最も適した場所だったのにちがいありません。

「三景軒(さんけいけん)」では、3つの円い窓から異なる景色を楽しむことができます
中国旅行に行かなくても、庭園内をゆっくりと見学していると、中国を訪れたような気持ちにさせてくれる燕趙園ですが、私の一番のお気に入りは、園内の西側に造られたイベントホール「集粋館(しゅうすいかん)」で毎日3回開催される「中国雑技ショー」です。入園料さえ払えば、無料で鑑賞できるのです。
雑技ショーは、午前9時30分、午後1時30分、午後3時から約30分間、異なる3つの演目で一年中、毎日公演されています。雑技ショーを毎日公演しているのは、日本中で唯一燕趙園だけなのです。
先日出かけたときは、中国の伝統芸能「変面」が演じられていました。変面師が手や扇子を顔にかざした瞬間に、お面が次々と変わっていく「秘伝」の芸です。変面が始まると、観客の視線は変面師に釘付けです。20回、いや30回以上は変面したのではないでしょうか。最後には、女性変面師が美しいお顔を拝見させてくれました。
燕趙園では、中華コスプレ大会、中国文化体験、花火大会など、年間を通して様々なイベントを開催しています。燕趙園は、今年で開園30周年を迎えます。国内外の多くの観光客から注目を浴び、今後ますます発展していく観光スポットだと、私は確信しています。

瓦を組み合わせ趣向をこらした窓を眺めながら、右手奥の燕趙門まで歩いてください。そこが入り口です
