鳥取名物「砂丘そば」
風景

昭和40年代後半から昭和50年代前半に高校生活と大学生活を県内外で送り、社会人になってからも山口県の私立高校で教員生活を2年間送っていました。そのため、鳥取に帰省する時は、汽車に乗り込み山陽本線や在来線を利用していました。
今と違って、本線から在来線に乗り換えるには待ち時間が長かったため、待ち時間を利用して、「駅そば」「駅うどん」などの軽い食事が旅の楽しみの一つでした。
旅行が趣味の一つだった私は、長期休暇には、全国各地に出かけていました。将来は、中学校か高等学校の社会科の先生になりたいという夢を描いていましたので、将来的に教科書で教える可能性のある場所は、現地を訪ね自分の目で確かめておきたかったからです。
遠方の地は、鉄道利用が中心になります。各地の駅のプラットホームには、小さなお店があり、そばやうどんの小さな暖簾がゆれていて、「こちらにおいでよ」「時間はかからないから食べてみてよ。美味しいよ」と手招きしていました。駅そば、駅うどんは、まさしく昭和の原風景の一つでした。
鳥取駅構内には、今から71年前、昭和29年創業の「砂丘そば」があります。しかし、高校生までの私の日常の生活圏は鳥取県の中部地区だったので、利用する機会は全くありませんでした。
ところが、社会人となり“ふるさと再発見”に目覚めるようになってから、時々、食べに出かけるようになりました。
砂丘そばの最大の魅力は、「安くて、早くて、うまい!」この3拍子をガッチリと持ち合わせていることです。430円の安価な生麺のそばは、あっという間にゆで上がり、着席して1分以内に目の前に現れます。丼のなかではゆらゆらと香ばしい香りの湯気が立ち上がっています。
生麺のそばは、青山製麺さんのそばです。鳥取県東部地区のスーパーではほぼ間違いなく販売されています。麺の上にちょこんと載せられているのは鳥取名産の「あごちくわ」です。お店のこだわりの「出し汁」が麺にからみつき、深みのある味が口の中に広がります。食べ終わると満足感で満たされます。
トッピングもいろいろあります。この日は170円のかき揚げをプラスして、プチ贅沢感を味わいました。かき揚げの中に隠されていた小さなホタテ貝が美味でした。
関西方面や岡山方面から特急列車を利用して鳥取駅にご到着後は、「砂丘そば」で腹ごしらえをしてから、山陰の旅に出かけてみてはどうでしょうか。「砂丘そば」は、一推し、二推し、三推し、です。
7年前に梨楽庵を起業した時の最初のお客様は、広島に嫁いだ姉の大学時代の友人たちでした。三重県在住の3人のおば様たちは、三重県から大阪までは近鉄特急を利用し、大阪からは特急「スーパーはくと」に乗り換え、お昼前に鳥取駅に降り立ちました。
私は改札口の前で梨楽庵のロゴマークを掲げてお迎えし、ランチに案内したのが「砂丘そば」でした。「砂丘そば」を食べ終えた後、なつかしい昭和の雰囲気を体感したおば様たちを連れて、梨楽庵企画の1泊2日の特別ツアーが始まったのです。
ツアーが終了した翌日の午後、おば様たちは倉吉駅から特急列車に乗り込み、無事に自宅に戻られました。それから数日後にお礼状が届きました。
お葉書には、「決して忘れることのない思い出となっています」と、もったいないお言葉が書かれていました。梨楽庵第1号のお客様から頂いたお言葉が私たち夫婦に希望の光となって大いなる勇気を与えて下さったのです。
