農家民宿 梨楽庵ブログ

何もない、ことはない!

梨楽庵

 都会から来た人たちや外国の人たちに自分たちが住んでいる田舎を紹介する時、代表者の挨拶で耳にしたくない言葉があります。「えー、ようこそ、お出でくださいました。ここには何もないですが、…。しかし、えー、緑豊かな自然やきれいな空気があります。人情も豊かです。えー、……。」

 何もない、という挨拶を聞く度に私は悲しくなってしまいます。「人口約52万人、全国で最も人口の少ない鳥取県ですが、県内各地には「都会にはない」ものがたくさんありますよ。

 都会の人たちにとっては、田舎にしかない、心を引きつけられる宝物がたくさんあるのですよ」私の腹の中では、何もない、を聞く度に、へそ曲がり虫が独り言を発し始めます。

 数年前のことです。某紙を読んでいると、社説にある自治体の首長が、「わが町と言えば『これだ』というものがない、わが町の豊かさが発信されていない、交流の場がないといった課題がはっきりした」との認識を示した、と書かれていました。

 残念至極です。自治体のリーダーが議会で「ない。ない。」発言をするなんて、ありえなーい。「ある。ある。」発言をして、住民に誇りと自信を与え、支援と協力をお願いするべきです。それこそが、真のリーダーです。

  「灯台下(もと)暗し」という慣用句があります。灯台の真下は薄暗くて宝物が落ちていても気づかないのかもしれません。しかし、宝物はどこか遠くにあるのではなく、田舎の地元にも必ずあるのです。

 きらびやかな大都会の生活に憧れる若者たちの感情は、将来的にも変わりません。それは誰もが持ち得る青春時代特有の激情だからです。

 昨年末の地元紙の読者からの投稿欄に次のような文章が掲載されていました。

  「大阪から家族4人で倉吉へ移住して、1年半ほどたった。夏には保育園に行く前に畑に寄り、ミニトマトを頬張る。帰りにも必ず寄って、“もう一つ!”と取っては口に運んでいた。子どもたちはトウモロコシも大好きで、収穫してすぐに電子レンジで加熱して、冷めるのが待てずに熱々を1粒ずつ食べていた。世界一新鮮な野菜を毎日楽しんでいる。(中略)

 休日に公園に行くと、滑り台やブランコで順番待ちせずに遊ぶことができる。大阪ではどこに行っても行列だったので、人の少なさに快適さを感じてしまう。(中略)大阪にはない自然豊かな環境で、小さなことに幸せを感じながら生活している。移住を検討されている方、一緒にぜいたくを味わいませんか?」(倉吉市 女性 38歳)

 都会の生活と田舎の生活と、どちらが自分に合っているかは人それぞれです。田舎生活に窮屈感を感じる方もおられます。投稿者のように、田舎の生活環境に幸福感を感じられる方もおられます。

 大切なことはリピートできる地元づくりではないでしょうか。都会で就職し生活を始めた若者たちの中にも、ミスマッチを後悔している人もいます。地元の会社に就職し、親元近くで生活し、穏やかな家庭生活を築きたかったと思い悩んでいる若者も多いのです。

 都会で生活を送る中で、投稿者のように地方の小都市や田舎の生活に憧れを抱いた人や、地元愛に目覚めた若者が切望していることは、IターンやUターンを決意できる受け皿が田舎や故郷にあることです。

 受け皿とは、子育てに必要な魅力的な教育環境と安心して働ける職場環境です。地元の行政や企業が10年先、いや、30年先を見据えて、粘り強く準備していくことが急務ではないでしょうか。

 鳥取県も自然災害の猛威から逃れることはできませんが、世界の中でも最も恵まれた国の一つが日本です。そして、恵まれた自然環境に包まれ、穏やかな人柄の県民性があるのが鳥取県です。鳥取県で人生設計をしたいと夢みる人たちは、今後、ますます増えてくると私は確信しています。