農家民宿 梨楽庵ブログ

鳥取の名物バスガイド

梨楽庵

 

    梨楽庵の前庭のサツキが満開です

 2年前、日本海新聞を読んでいると、観光ガイドとして全国的に著名な広沢孝彦さんの投稿文が掲載されていました。鳥取県内の観光施設の職員さんを対象に県内4か所で巡回講演された内容を紹介されていました。

 広沢孝彦さんは、御年87歳。50年以上観光業に携わり、鳥取の名物ガイドとして紹介されている記事を何度か読んでいました。観光に関心のある私にとっては憧れの人でした。

 講演内容は、観光で大切なことについてでした。まず、印象に残った言葉は、観光客の第一印象にはリハーサルがないこと、でした。その意味は、接客にはやり直しがきかないということではないでしょうか。

 全てのお客様に対して、一期一会の気持ちで真剣勝負をしてほしい、最初の出会いの瞬間こそ最も大事だ、と読み取りました。

 梨楽庵では修学旅行生の民泊を受け入れています。毎年、毎回、一番緊張するのが最初の出会いの場面です。対面式のとき、私たち受け入れ家庭は体育館に整列して座っている生徒たちの前に立って対面しています。

 修学旅行生たちの表情は微妙です。私の心も五里霧中ならぬ、5m霧中をさまよっています。対面式終了後、生徒たちを車に乗せて出発するのですが、車中での会話のやり取りの時間が最も大切だと実感しています。

 広沢さんの二つ目のアドバイスは、「目配り」「気配り」「心配り」の大切さでした。長年にわたり観光業を天職だと信じ、誇りに思って勤めて来られた方だからこそ発することのできるアドバイスではないでしょうか。

 最も心に響いた言葉は、「言葉は言霊(ことだま)であって、いじめに通ずる言刃(ことば)であっては決してならないこと」という一文でした。

 言霊については知っていましたが、“言刃”という文字の使い方は初めて知りました。使い方次第で、確かに言葉は人をあやめる刃となるのです。

 新聞によれば、年齢を考慮されて、遠距離旅行のガイドは引退されますが、1泊2日以内のガイドは続けられるようです。「目」と「気」と「心」を配られた、流暢でわかりやすい名解説で知られる広沢さんのガイドで小旅行を是非とも体験したいものです。

    2025年12月の日本海新聞より

〈 追記 〉

 広沢さんを紹介した記事の「石を投げられ」の文面に次のような記述がありました。「幼少期は自身の声に悩んだこともあったという。よく通る高い声は「男おんな」と同級生にからかわれ、石を投げられた経験もあった。

 親にも相談できず自身の声に嫌気がさしていたが、中学生の時に音楽の教諭から「その声は50~70代になっても変わらない。声を活かす仕事に就くといい」と背中を押され、自信がついた。広沢さんは「人間どこかに取りえがある。声の良さを見いだしてもらい、努力した結果、今がある」と力を込めた。

 この記事が掲載された数日後、日本海新聞の読者の投稿欄に、広沢さん自身の投稿文が掲載されていました。

 読み進めると、驚きました。広沢さんの独特な声の魅力に気づき、声が悩みだった広沢さんに自信と勇気を与えた音楽の教諭というのは、私の伯父だったのです。

 私の父も父の長兄だった伯父もすでに鬼籍に入っています。伯父は大正5年頃の生まれでしたから、生きていれば110歳ですから、広沢さんの年齢で逆算すると、伯父は20代前半の年齢だったと推定できます。

 まだ若い青年教師だった伯父が、教え子の人生をプラスにかえる教育的視点を持ち合わせていたことに、驚くとともに、とても誇らしく思えました。伯父はとても温厚な人柄だったように記憶しています。

 広沢さんの投稿文を読み、より一層、実際のガイドを体験したいと思いました。