湯梨浜町もジオパークかも?②
風景

“後島(うしろじま)”の海側は断崖絶壁です
調べていると新たな発見がありました。甲亀山の海側は日本海の荒波によって浸食された断崖絶壁となっていて、“海食崖”と呼ばれる地形です。地表に現れた海食崖の岩石も小浜地区と同じく“亀尻玄武岩”でした。

溶岩の上を歩くと非日常感を味わうことができます

身近な、手に届く所に別世界があるのです
しかも後島の海食崖は、3つの溶岩の地層が重なった珍しい地形だったのです。画像1は、上部は硬い性質の玄武岩で、下部はガスが抜けたあとの孔(あな)が無数に見られる性質の玄武岩です。時代の異なる二つの玄武岩に挟まれた地層が“火山弾”などの破片を含んだ火山噴出物からできた岩石の地層です。

〈画像1〉中央部の緑色の草が生えた地層を上下で性質の異なる玄武岩が挟んでいます

画像1の裏側の景色です。東側から見ています
後島にはもう一つ見所があります。海食崖の下部から海に向かって平坦な玄武岩の地形が見られます。荒波と風化作用によって浸食されて形成された地形で、“波食棚(はしょくだな)”と呼ばれています。
見所は、この波食棚に“甌穴(おうけつ)”がたくさん形成されていることです。甌穴とは、くぼみに入った石が海の荒波によって回転し、岩石を削ってできた穴のことです。(注3)

白っぽくなっている所が甌穴(おうけつ)です

穴に埋まった硬い岩石が波の力によって回転し、甌穴をつくります

岩石は挟まっていませんが、大きな甌穴です
溶岩地形はさらに西側の海岸線に沿って、湯梨浜町内の宇谷地区、宇野地区、橋津地区の海岸にも見られます。宇谷地区は後島と同じく“亀尻玄武岩”の岩石海岸です。宇野地区は、東郷池の西側にある御冠山(みかむりやま)から噴出した“御冠山安山岩”の岩石海岸です。そして、橋津地区は、“鉢伏山板状安山岩”の岩石海岸です。

宇谷地区の海岸です。後島と同じ玄武岩です

大きなクレーンのようなものを載せた船の後ろが「甲亀山」です

宇谷地区の西隣の宇野地区の海岸は“安山岩”の溶岩でできています

海まで流れ着いた溶岩が荒波に押されて盛り上がったのでしょうか

当時の海岸線はもっと奥だったはずです。海に辿り着いてからも膨大な量の溶岩流が海の中へ流れ込んだのでしょうか

宇野地区の西隣にある橋津地区の“海食崖”です。大昔はここは海だったのです

荒波によって浸食し削り取られた“海食洞”です。岩石は“鉢伏山板状安山岩”です
湯梨浜町の南東方向には“鉢伏山(はちぶせやま)”があり青谷町との境界になっています。この鉢伏山から噴出した膨大な量の溶岩は、青谷町側だけでなく、湯梨浜町側の日本海に向かっても流れ下ったのです。(注4)

右側の山が「鉢伏山」、中央が東郷池、東郷池の左側奥の冠(かんむり)のような形の山が「御冠山(みかむりやま)」です
溶岩が冷え固まった後は、長い時間をかけて溶岩の周辺部が浸食され、現在の谷になりました。硬くて浸食されにくい安山岩の溶岩は、湯梨浜町側にも海抜200mから300mのなだらかな台地状の地形を形成し、その後、台地の上を流れる小規模な河川が急峻な崖の所では滝となり流れ落ちたのです。
それが湯梨浜町内にある“今滝(いまだき)”と“不動滝”の2つの滝なのです。鳥取市青谷町と湯梨浜町では現在の行政区は異なりますが、大自然が造り出した地質からみれば、同質の環境下にあるのです。

安山岩の断崖を流れ落ちる“今滝(いまだき)”およそ44m、梨楽庵から車でわずか10分で行けます

安山岩の断崖から流れ落ちる“不動滝”(およそ32m)、今滝から不動滝までは車で3分ほどです
湯梨浜町のシンボルの一つである東郷池は鳥取市にある湖山池と同じで、海だったところが砂浜によってせき止められ、海水も流れ込む汽水湖であり、大変貴重な自然環境が守られています。黒いダイヤと呼ばれるシジミも豊富に水揚げされています。
また、東郷池は池の中から温泉が噴出するという他地域にない特色があります。東郷池の周囲には弥生時代の遺跡や古墳時代に造られた古墳が数多く残っています。何と古墳の石室の製作には、“板状安山岩”が用いられていたのです。戦国時代の山城跡も多く残っていて、歴史的にも価値ある地域なのです。

“鉢伏山板状安山岩”です。梨楽園から見つけました。割れ目から岩石がはがれます
今はまだ、ジオパークには認定されていませんが、専門的な方々が調査をされて、ガイドの育成や地域振興策などの継続的な取り組みを始めれば、湯梨浜町内もジオパークとして認定され、観光客の誘客にも大きく貢献するのではないかと考えています。
専門性の少ない私見なので、一笑に付されるかもしれませんが、湯梨浜町の新たな誇りの一つになるのではないかと密かに期待しています。
(注1)現在は漁業権がありますので、個人で勝手に魚介類を採ることはできません。
(注2)参考文献…『鳥取地方の“石ころ”物語』(山中巌著)
(注3)急流によって、河川の岩石が削られてできる場合もあります
(注4)後島の地質は主に“亀尻玄武岩”ですが、甲亀山は“鉢伏山板状安山岩”の地質です。
( 追記 )
参考文献…『泊村誌』『東郷町誌』『新修羽合町史』『青谷町誌』『鳥取地方
の“石ころ”物語』(山中巌著)
