東郷池?東郷湖?どっちなの?
梨楽庵

湯梨浜町の中央部に位置する汽水湖を、東郷湖と呼ぶ人と、東郷池と呼ぶ人がいます。これまでに、どっちが正しいのか話題になったことが何度もありました。(注1)
令和5年10月にNHKが現地取材を行ったネット情報によると、地元の漁業組合や場所の名前には「東郷湖」が多く使われていますが、地元に住んでいる人は「東郷池」と呼んでいる人が多いようでした。
旅館組合の関係者の方に取材すると、「観光面では、ほぼ100%“湖”を使っています。“湖”の方がイメージが良かったり、規模感も伝わります。町内の二つの温泉地の“売り”は、 湖上の景色を楽しみながら温泉につかってもらうことなので、それをお客さんに伝えるには、“湖”の方が表現しやすいです」と答えていました。
国土地理院の地図では、「東郷池」と表記されていました。その理由を尋ねると、「厳密に区別することは困難で、地図には、“その土地で呼ばれている名称”が記載されています。東郷池という名称は、合併する前の東郷町と羽合町の意見を聞いて決めました」と説明されていました。
NHKの取材の中で、新たな発見がありました。何とおよそ200年前にこの地を訪れ、伊能忠敬が作成した日本地図には「東郷湖」と記されていたのです。残念ながら、この時の取材では伊能忠敬が「湖」を使った根拠はわからなかったようです。(注2)
さらに取材は続きました。河川法によると、東郷湖(池)の管理者は鳥取県です。なので、県立公園の名称には「東郷湖」を使用していますが、池そのものを呼ぶ場合は「東郷池」と呼んでいました。

「東郷湖羽合臨海公園」内の案内図には“東郷湖”と記載されています

ところが、名称には“東郷池”と記載されています
“湖”なのか、“池”なのか。この問題は、何と、2007年には県議会でも取り上げられ、「地元の意見を尊重したい」という平井知事の意向を受け、町は翌年、全世帯を対象にアンケート調査を行いました。集計結果は、71.6%が“池”で、25.5%が“湖”でした。この結果をもとに、町は11月号の広報誌で次のように報告しました。
「町は正式名称を国土地理院による“東郷池”のままとすることとし、今後は特別な場合を除き“東郷池”を使用します。町は、団体などが“東郷池”または“東郷湖”のどちらを使用するかを強制しません。愛称としてどちらでも使用していただければよいと考えています。」

はわい温泉内にあるガイドマップには“東郷湖”と記載されています
つまり結論は、どっちを使用してもよい、ということでした。“東郷池”なの?“東郷湖”なの?一体どっちなの?話題となった当時からは、18年も時が経過しています。時間の経過とともに物事の経緯は忘れられてしまうものです。
風光明媚な東郷池(湖)の周囲をウオーキングに訪れる全国の人たちは、東郷池(湖)の周囲に設置された案内板や標柱を見ながら、今後も小首を傾(かし)げ続けるのかもしれません。
(注1)汽水湖…淡水と海水の中間の塩分を持つ湖沼のことを言います。東郷池(湖)は橋津川を通して日本海とつながっています。そのために、海からの栄養分と池の栄養分が微妙に混ざり合い、特産の“しじみ貝”をはじめ、小ブナやエビなど豊富な魚介類が生育できる環境が生まれたのです。
