農家民宿 梨楽庵ブログ

醍醐うどん

風景

*一昨日、島根県東部を震源とする地震が発生しました。鳥取県中部に位置する湯梨浜町も震度4の大きな揺れを感じました。友人知人の皆様からお見舞いの電話やメール等をいただき、感謝申し上げます。

 現時点では、被害は生じていませんので、ご安心ください。なお、今回に限らず、全国で地震が多発していますので、皆様もご注意ください。それでは、今日のブログを発信いたします。

  「そば」と同じくお気に入りの「うどん」について語ろうとすると、なぜか臆病になってしまいます。そば通と同じく、うどん通も全国各地におられます。うどん通の人たちは「うどん県」の香川県はもちろんのこと、名店と言われるお店をチェックしては日本中の食べ歩きをしています。

 うどんの世界にはまり込むと、自分で麺を打ち、ご自慢のうどんを披露したくなる人も大勢います。そんな中で自分ごときがお気に入りを語っても聞く耳をもってもらえないだろうと思うからです。

 しかし、勇気をふるって、私が鳥取県で一番おいしいと賞賛している“醍醐うどん”を紹介します。この名店は、山陰自動車道赤崎中山ICを下りてから、日本海に向けて車を走らせていると国道9号線に突き当たります。そこを左折して、米子方面に向かってしばらく進むと、右手に「醍醐うどん」と書かれた大きな看板が現れます。海に面した一軒家のお店が「手打ちうどん 醍醐」です。

 山陰自動車道ができるまでは、鳥取県の中部地区から米子市や松江市へ行こうとすると国道9号線を必ず通ります。なので、国道9号線沿いに面している「醍醐うどん」は必ず目に入ります。

 初めてお店に入ったのは、もう30年以上も前だったと思います。「醍醐うどんは美味しいよ」という評判は聞き知っていたので入店し食べてみると、確かに美味しいのです。初めての出会いの時から「醍醐」のうどんは私の心を捉えたのです。

 うどん=醍醐、が頭の中にすり込まれて以来、職場や友人たちの間でうどん談義が始まると、醍醐のうどんを食べたことのある人はほぼ間違いなく激賞していることに気がつくようになりました。「いろいろ食べてきたけど、やっぱり醍醐のうどんが一番だよなあ」「うん、同感、同感!」

 さて、話を引っ張りすぎました。一体醍醐のうどんとは、どのようなうどんなのでしょうか。退職し、梨楽庵を起業してからは、新型コロナ感染症の蔓延などもあり、醍醐に出かける機会がありませんでしたが、ホームページを立ち上げたので、3年前に取材を兼ねて久しぶりにお店に出かけました。

 ところが、残念無念。週末だったために、お店は満席状態。駐車場も空席を待つ人たちで溢れていました。あっさりと諦め、翌週の平日に再挑戦しました。さすがに平日はお客さんも少なく、楽々入店できました。

 幸運だったのは、店主がうどんを打つ姿を見ることができたことです。身振りで撮影してもいいですか?と店長に視線を送ると、こっくりとうなずいてくださいました。

     熟練の名人芸をご覧ください

 うどんの品目はたくさんありますが、一番の推しは、店名が付けられた950円の“醍醐うどん”です。大人気の「醍醐のうどん」とは、すなわち“醍醐うどん”のことなのです。

 醍醐うどんを注文してから、店内を眺めていると、色紙に書かれた言葉が目に飛び込んできました。「醍醐のうどんは、打ち立て、切り立て、茹(ゆが)き立て。コシの強さが自慢です。絶品です。」何と店主自らが絶品だと堂々と宣言しているのです。

 しばらくすると、大ぶりの丼で“醍醐うどん”がやってきました。まずは、出汁をすすります。口当たりのよいおいしい味です。次は、箸でググッと麺をつまんで口に運びます。確かにコシが強い!太麺でもちもち感があるので、手打ちうどんを食べているという食感が抜群です。

 さあ、次は、ピチピチの黄色い生卵を箸でつついて出汁に混ぜ込みます。すると、出汁と生卵が化学変化を起こして出汁のうまみが増すのです。レンゲですくって二度三度と飲むと、もう、たまらない美味しさです。

 醍醐うどんはトッピングはできません。最初から具材が入っています。生卵、牛肉、海老天、ワカメ、そして、天かすです。醍醐うどんの出汁のうまみは、これらの具材の組み合わせが生み出す魔法なのかもしれません。

 天かすの分量が適量なのでしょう。食べ終える頃になっても、出汁がしみ込んだ天かすが残った具材を絡め込んで最後の一滴まで食べてと訴えかけているのです。望み通り、私は大ぶりの丼一杯を平らげました。ふー!お腹も心も満足感で一杯です。

 近くの席で食事をしていた年配の女性が、食事を終えてレジに向かう途中に誰から問われたわけでもないのに、一言つぶやきました。「ああー、おいしかったー」

 私も満足感に浸りながら、レジで店員さんに「美味しかったです」と告げてから尋ねてみました。「店主さんは、何年ぐらいうどんを打たれているのですか」「はい。50年になります」「えっ!えー!50年ですか。すごいです!ごちそうさまでした」お店を出ながら、店主自慢の醍醐うどんは、やっぱり絶品だ、と大いに納得できました。

 皆様も是非一度、醍醐うどんを食べて、うどんの「醍醐味」を堪能してください。今度はいつ食べに行こうかなっと。

〈 追記1 〉

 入店した日は、天候に恵まれました。日本海に面したお店の大きな窓ガラスからは左手に島根半島がくっきりと見え、右手には隠岐の島も見ることができました。醍醐の店名は、この地域が後醍醐天皇とゆかりがあり、店名にされました。

 鎌倉幕府の倒幕が失敗し、隠岐の島に流刑となった後醍醐天皇は、1333年2月に隠岐の島を脱出しました。追っ手が迫る中、脱出船が着岸したのがこのあたりの海岸だったのです。後醍醐天皇を迎え入れ、船上山(せんじょうさん)に立てこもり支援したのは、伯耆国名和の豪族、名和長年の一族でした。

 後醍醐天皇が倒幕に成功し、京都に戻り、天皇自らが中心となって政治を行う「建武の新政」を開始すると、名和長年は天皇の信任が厚く、側近として活躍したのです。しかし、1336年、後醍醐天皇に反旗を翻(ひるがえ)した足利氏との戦乱で敗死し、歴史の舞台からは退くことになったのです。その後、都の政治は、後醍醐天皇と足利尊氏が激しく対立し、南北朝の戦乱の時代を迎えることとなったのです。

 「手打ちうどん醍醐」のお店の近くには、名和神社があり、名和長年を主祭神として名和一族が祀られています。隠岐の島を眺め、およそ700年前の日本の歴史に思いを馳せながら、醍醐うどんを食べて見てはいかがでしょうか。これこそ、無上の醍醐味です。

〈 追記2 〉

 毎月1~2回程度、鳥取の食について話題提供していきます。食も一つの風景と捉えて、ブログ「風景」の中で紹介していこうと思います。