植田正治写真美術館②
梨楽庵

大山の上空に帽子が…?このマジックは入館して確認してください
植田正治写真美術館に関しては、9年前に忘れ得ぬ出来事がありました。よく人生には3つの坂があると言われます。「上り坂」「下り坂」そして、「まさか」です。これからお伝えするお話は、「絶対にあり得ない、ま・さ・か」です。
自宅で夕食を食べていると、妻に電話がかかってきました。電話の主は、中年と思(おぼ)しき男性からでした。「先日、伯耆町にある植田正治写真美術館に出かけたのですが、一期一会という企画展が開かれていたので展示作品を鑑賞していたところ、作品の一つに〇〇(旧姓)さんが写っているようだったので、ご本人は知らないのではないかと思い、お電話をしました。」
一瞬、妻は不審者からの電話ではないかと思ったようです。するとすかさず、「あ!私は不審な者ではありません。NHK鳥取放送局に勤めていまして、実は、〇〇さんとは高校1年生の時の同級生なのです。もしかしたら、写真は〇〇さんではないかと思ったので、ご連絡しました。」
妻は高校の同級生だと名乗る彼のことはすぐには思い出せなかったようです。電話を切ってからこの話を妻から聞き、なんか信じられないけど、確認のために週末に出かけてみようということになりました。
写真美術館に着き、展示作品を片っ端から一つひとつ調べてみると、セーラー服を着た中学生の女の子が二人、駅の待合席に腰掛けている作品が目に留まりました。
「もしかしたら、これじゃないのかな。これ、本当に私なの?」じーっと、食い入るように写真を見つめていた妻は、「私だわ―!△中の制服を着ているし、隣は幼友達の□□ちゃんだしー。うっそー!」と、大変な驚きようでした。しかし、作品を見ても、植田正治さんから写真を撮られた当時の記憶は全くよみがえらなかったようでした。
「今の時代なら、植田さんは不審者扱いだよね。でもどういう経緯で二人が撮影の対象になったのか、植田さんに聞いてみたい気がするんだけど、もう他界されているし無理だよね。でも、植田正治さんの目に留まったこと自体がすごいね。約1万2千点の作品の中の2点の作品だからね。美術館に永久保存されるなんてすごいことだよ」。
そんな会話をしながら美術館を後にしました。電話連絡をしてくださった妻の同級生に大感謝です。生きていると人生、本当に何があるのかわかりません。でも、これからも何か不思議な出会いがあるのではないかと、未知との遭遇に生きる楽しみを実感した“ま・さ・か”でした。

帽子が移動してる?このマジックも入館して確認してください
〈 追記 〉
妻の写真は、『植田正治 小さい伝記』(2008年初版)の口絵に掲載されています。


梨楽庵から美術館へは、車で約50分で到着します
