梨の横綱
梨楽庵
写真は、9月上旬に収穫を終えた梨楽庵のゴールド二十世紀梨です。毎年、その年に収穫した梨の中で、一番見事なものを仏壇にお供えし、精魂込めて梨作りに取り組んで来た父母への供養としています。
父母が梨作りに取り組んでいた最盛期には、約4万個ほど梨袋をかけていたと聞いていますので、収穫量も4万個ほどあったと思います。私たちが栽培している個数は約1400個ほどです。父母の時代とは雲泥の差です。1400個ほど栽培するのにも、梨作りは一年間通して作業が続きますので、かなりの労力がかかります。
梨栽培で子育てをし、生活を支えていかなければならなかった父母の時代はどんなに大変だったのか、想像すらできません。昭和一桁生まれで、戦前、戦中、戦後を生き抜いた世代のド根性は尊敬に値します。高度経済成長の真っ只中に、ぬくぬくと大人になった私は、父母が伝えたかったかもしれない「生き抜く姿」から学び取り、残りの人生で生かしていかなければなりません。
仏壇にお供えした梨を見ていると、この梨はリーダーの資格を備えていると感じました。僅か1400個ほどの個数ですから、1個1個、毎年丹精込めて育てています。しかし、収穫して梨袋を開いて見ると、姿、色合い、味の全てを兼ね備えた梨はなかなか見つけ出すことはできません。もちろん、進物用に相応しい梨はたくさんあるのですが、完璧な梨は1000個に1個ではないかと感じています。この1個こそが梨の横綱です。
大相撲の大ファンの私は、横綱がどれほどの人数の力士たちの中から誕生するのかと疑問に思い、調べてみました。令和4年12月時点で相撲界に在籍している力士数は605人だそうです。若乃花、貴乃花の兄弟横綱が活躍し大相撲人気が絶頂期だった30年ほど前は、940人近くいたそうです。秋場所を休場した横綱照ノ富士を除くと、今の大相撲には傑出した力士がいません。照ノ富士のあとを受け継ぐ力士は大関陣の中には見当たりません。それは600人の中で選抜された横綱と900人の中を駆け上がった横綱では力量の差が歴然としているからです。
偉そうにリーダー論を語っていますが、語る人がリーダーになれるわけではありません。真のリーダーは、寡黙でコツコツと人知れず努力を重ねる人なのかもしれません。しかし、今、相撲界で明確な目標を語り、心技体を磨いている力士がいます。伯桜鵬さんです。彼こそ1000個に1個、いや、1000人に1人の心技体を兼ね備えた逸材です。
伯桜鵬さん!あなたのいない秋場所は物足りなかったですが、じっくりと怪我を治して、再び、土俵で大暴れしてください。鳥取県民は「横綱になる!」という伯桜鵬さんの明確な目標が達成される日が来ることを待ち望み、完全回復を祈りながら、これからもTVの前で応援を続けます。
*お供えが終わり、父母の代わりに梨の横綱をいただきました。穏やかな風格を備えた逸品でした。