砂の美術館(日本編)
梨楽庵
砂像で制作された日本編の看板、ここに風神雷神図を描く企画はさすがです!
砂像のすぐ右隣が入り口です。ワクワクします
ニュースで写真は見ましたが、実物を前にすると迫力に圧倒されます
世界的に有名な砂像作家さんたちです
昨日、二度目の取材で砂の美術館に行きました。平日にも関わらず、鳥取砂丘には全国から多くの観光客が訪れていました。毎年、ゴールデンウィーク後半は、鳥取砂丘方面は大渋滞となりますが、昨日は梨楽庵から車で40分ほどで到着しました
鳥取砂丘に到着する直前の坂道を上っていると右手に駐車場が見えてきます。その奥にあるのが世界的に見ても珍しい、砂で作った造形物を専門に展示する「砂の美術館」です。
今から19年前の2006年の開館当初は、屋外や仮設テント内で展示されていましたが、精巧に制作された砂像が風雨によって崩れてしまうことに心を痛めた制作者や見学者の念願が叶い、2012年からは屋内展示場で見学できるようになりました。
入館して展示会場に足を踏み入れると、スサノオノミコトとヤマタノオロチが戦っている砂像が圧倒的な存在感で迫ってきます。第16回目の今回の展示は「日本」がテーマです。今春、4月13日に開幕した「大阪・関西万国博覧会」を想定してテーマに選定されました。
砂の美術館の企画の核心は、「砂で世界旅行をすること」です。驚くことは、ほぼ毎年テーマを替えて展示を行っていることです。しかも展示期間が終わると、作品を崩して砂に戻し、次回はその砂を再利用して新たな作品を制作しているのです。信じられますか。
日本編の作品は、世界12カ国から20名の砂像彫刻家が鳥取にやってきて、およそ3000トンの砂を使い、2週間から1カ月の期間で制作されました。砂像は、「砂」と「水」だけで圧縮した砂の固まりを彫刻して造形し、のり等の凝固剤はいっさい使用していません。
さらには、使用している鳥取の砂が細かいパウダー状の砂であったために、砂の粒子がうまくかみ合い、砂像が崩れにくい性質だったと説明されていました。鳥取の砂との出会いが、世界で活躍している砂像彫刻家の心を捉え、創作意欲を大いに刺激したのかもしれません。
屋内展示場には、スサノオノミコトとヤマタノオロチの砂像から始まり、弥生時代から戦後の高度経済成長の時代までの、日本の歴史と文化の粋(すい)を表現した19の作品が展示されています。写真で紹介してしまうと、まだ入館していらっしゃらない方にお叱りを受けそうですので、スサノオノミコトとヤマタノオロチの砂像のみで、他の作品は割愛させていただきます。
砂の美術館ができるまでは、「鳥取砂丘に行っても砂丘があるだけで、他には特別に見学するものがない」との不満の声が観光客の皆様から漏れ聞こえていました。
しかし、世界中でここにしかない、唯一無二の「砂の美術館」の存在が知られるようになった今日では、「開館時間は午前9時ですが、週末には30分後には218台が駐車できる無料駐車場が満車になってしまいます」と、2年前にエジプト編の取材で訪れた時、駐車場係の方が話しておられました。
私が砂の美術館のプロデューサーさんたちに1番感心することは、展示テーマを原則1年程度で終わらせて、あえて砂像を壊して、新たな作品を制作展示していこうとする斬新な発想です。砂像彫刻家全員の合意がなければ絶対に不可能だったと想像します。
木材や鉄などの金属類で制作した作品なら意図的に壊さない限りはほぼ永久に展示することができます。しかし、その甘い誘惑の声に惑わされず、今や大人気の観光施設に育て上げられた手腕に感服しています。観光客にとっては、鳥取砂丘に来る度に同じ砂像を見るよりも、テーマが替わることでワクワク感が高まり、リピートしたくなるのではないでしょうか。
天然記念物の鳥取砂丘は圧倒的な存在感ですが、唯一弱点があります。天候に左右されることです。風雨の激しいときや雪が降る冬には見学が困難になります。そんな時でも、「砂の美術館」に立ち寄っていただくと、十分満足して鳥取の旅を楽しんでいただけるのではないでしょうか。
日本編の取材のために、先週の金曜日の開幕初日に砂の美術館を訪ねました。開館前に記念式典が行われていた関係で、開館直後はまだ関係者の方たちが中心で、一般の見学者は少なく、じっくりと作品を鑑賞することができたので満足感で一杯でした。
明日からは4連休です。きっと多くの観光客が鳥取砂丘を、そして、砂の美術館を目指して全国各地から訪れることでしょう。
*「日本編」は来年1月4日まで、年中無休で開催されています。