砂の美術館(スペイン編)
梨楽庵

「砂で世界旅行・スペイン編」が開幕しました
鳥取砂丘に到着する直前の坂道を上っていると右手に駐車場が見えてきます。その奥にあるのが世界的に見ても珍しい、砂で作った造形物を専門に展示する“砂の美術館”です。
今から20年前の2006年の開館当初は、屋外や仮設テント内で展示されていましたが、精巧に制作された砂像が風雨によって崩れてしまうことに心を痛めた制作者や見学者の念願が叶い、2012年からは屋内展示場で見学できるようになりました。
入館して展示会場に足を踏み入れると、ガウディの未完の大作「サグラダ・ファミリア」の砂像が圧倒的な存在感で迫ってきます。第17回目の今回の展示は「スペイン」がテーマです。世界的建築家アントニ・ガウディの没後100年の節目なのでテーマに選定されました。(注1)

聖母の戴冠の砂像(キリストの生涯を描いた一場面)
砂の美術館の企画の核心は、「砂で世界旅行をすること」です。驚くことは、ほぼ毎年テーマを替えて展示を行っていることです。しかも展示期間が終わると、作品を崩して砂に戻し、次回はその砂を再利用して新たな作品を制作しているのです。信じられますか。
スペイン編の作品は、世界14カ国から20名の砂像彫刻家が鳥取にやってきて、およそ3000トンの砂を使い、1カ月の期間で制作されました。砂像は、「砂」と「水」だけで圧縮した砂の固まりを彫刻して造形し、のり等の凝固剤はいっさい使用していません。

さらには、使用している鳥取の砂が細かいパウダー状の砂であったために、砂の粒子がうまくかみ合い、砂像が崩れにくい性質だったのです。鳥取の砂との出会いが、世界で活躍している砂像彫刻家の心を捉え、創作意欲を大いに刺激したのかもしれません。
屋内展示場には、サグラダ・ファミリアの砂像から始まるガウディの建築物を中心としながら、スペイン帝国の黄金時代の歴史的な場面と情熱の国スペインの魅力を表現した19の作品が展示されています。(注2)
写真で紹介してしまうと、まだ入館していらっしゃらない方にお叱りを受けそうですので、サグラダ・ファミリア関係の砂像のみで、他の作品は割愛させていただきます。

砂の美術館ができるまでは、「鳥取砂丘に行っても砂丘があるだけで、他には特別に見学するものがない」との不満の声が観光客の皆様から漏れ聞こえていました。
しかし、世界中でここにしかない、唯一無二の「砂の美術館」の存在が知られるようになった今日では、「開館時間は午前9時ですが、週末には30分後には218台が駐車できる無料駐車場が満車になってしまいます」と、3年前にエジプト編の取材で訪れた時、駐車場係の方が話しておられました。
私が砂の美術館のプロデューサーさんたちに1番感心することは、展示テーマを原則1年程度で終わらせて、あえて砂像を壊して、新たな作品を制作展示していこうとする斬新な発想です。砂像彫刻家全員の合意がなければ絶対に不可能だったと想像します。
木材や鉄などの金属類で制作した作品なら意図的に壊さない限りはほぼ永久に展示することができます。しかし、その甘い誘惑の声に惑わされず、今や大人気の観光施設に育て上げられた手腕に感服しています。観光客にとっては、鳥取砂丘に来る度に同じ砂像を見るよりも、テーマが替わることでワクワク感が高まり、リピートしたくなるのではないでしょうか。
天然記念物の鳥取砂丘は圧倒的な存在感ですが、唯一弱点があります。天候に左右されることです。風雨の激しいときや雪が降る冬には見学が困難になります。そんな時でも、「砂の美術館」に立ち寄っていただくと、十分満足して鳥取の旅を楽しんでいただけるのではないでしょうか。

今日からは5連休です。きっと多くの観光客が鳥取砂丘を、そして、砂の美術館を目指して全国各地から訪れることでしょう。スペイン編は2027年1月3日(日)まで、年中無休で開催されています。是非とも鳥取へお越しください。よろしければ梨楽庵をご利用ください。心よりお待ちしています。
(注1)サグラダ・ファミリア…サグラダとはスペイン語で「聖なる・神聖な」という意味です。ファミリアは家族の意味です。つまり、“聖なる家族(聖家族)”の意味です。
(注2)19番目の作品は展望広場に向かう屋外に天幕に守られて展示されています。
