とっとり花回廊(晩秋)
梨楽庵

秋には“花の丘”はサルビアの花で埋め尽くされます
鳥取県の西部地区に日本最大級の花のテーマパークがあることをご存知でしょうか?通称“とっとり花回廊”と呼ばれている、鳥取県立のフラワーパークのことです。平成11年(1999年)4月18日にオープンし、今年は開園26周年を迎えます。
日本最大級とか、日本唯一とか、日本最古とか、観光名所や遺跡などに、「最も」という副詞がつくと、なぜか一度は訪れてみたいという気持ちになるのはなぜなのでしょうか。そこにしかないもの、めったに見ることができないものだからこそ、人の一生という限られた時間の中で、自分も一度は見てみたい、体験してみたい、と誰もが思うからなのでしょう。
とっとり花回廊は、平成3年(1991年)から取り組まれた第六次鳥取県総合計画の中で、鳥取県の観光の発展と、観賞のための植物を栽培する花卉(かき)園芸の振興を目的に、鳥取県西部地区の中心的な観光施設として建設された県立の公共施設です。開園から4分の1世紀が経過し、中国地方では人気の観光施設になっています。
花回廊に到着し、入園ゲートを通り抜けると、目に飛び込んでくるのが、四季折々の草花と巨大な円形の温室、“フラワードーム”です。天気の良い日は、伯耆富士と呼ばれる、日本百名山の一つの、「大山(だいせん)」を眺めることができます。

入園直後に見ることができる圧倒的な景観美が花回廊の最大の魅力だと私は思います。秀峰大山の自然美と人工的に配置された花園の融合によって生み出された造形美は、確かに必見の価値があるのです。
花回廊では、年間を通して四季折々の花を観賞することができるのですが、やはりベストシーズンは春ではないでしょうか。園内のあちこちで色鮮やかなチューリップを楽しむことができるからです。
平成22年(2010年)6月に、花回廊は世界的に有名なフラワーパーク、オランダのキューケンホフ公園と姉妹公園を取り決めました。キューケンホフ公園のメインフラワーは、チューリップです。
花回廊には、交流の証として、キューケンホフ公園のデザイナーが企画したオランダ風の花壇があります。新品種も次々と開発されているので、チューリップの既成概念を超えた、驚くべきチューリップとの出会いも楽しみの一つです。
とっとり花回廊の「推し」はたくさんありますが、推しの一つが、“展望回廊”です。日本最大級の規模なので、園内は起伏があり面積も広いため、散策するにはかなり時間がかかります。

展望回廊には国立米子高専建築学科の生徒さんたちのユニークな椅子の作品が展示されています。必見です!
しかし、周囲約1㎞の円形の屋根付き回廊が設置されているので、展望回廊を利用すれば、体力的な負担は軽減されます。しかも、高所から園内を見渡すことができるので、小鳥になった感覚で眺める体験もできます。
推しの二つ目は、“フラワートレイン”です。所要時間が15分ほどで、園内の見どころを案内してくれます。おとぎの国で走っているようなかわいらしいトレインなので、旅の思い出に是非ともご乗車ください。
ガイドさんは乗車されていないので、説明はありませんが、ゆっくりと進むトレインの乗り心地が気持ちよく、左右に広がる花園を眺めていると、花回廊こそが地上の楽園かもしれないという錯覚に陥りそうになります。

推しの三つめは、園内の中心部にどっしりと構えているフラワードームです。直径50m、高さ21mの存在感抜群の大温室です。ダイオウヤシなどの熱帯や亜熱帯の植物を中心に、洋ランやハイビスカスなどを一年中見ることができます。
特に、洋ランがカーテンのように飾りつけられたトンネル通路は、筆舌に尽くし難い、という言葉のとおり、どのような言葉でも表現できないくらい見事です。これをデザイン設計された方に感服です。
花回廊の見どころを上げるとキリがありませんが、実は、花回廊のメインフラワーはチューリップではなく、「ゆり」です。花回廊の建設地には、もともと「ササユリ」が自生していたので、「ゆり」を一年中観賞できる施設として、入園ゲートの真向かいの場所に「ゆりの館」(東館)の展示場を建設されたのです。

ゆりの館(東館)の展示場
26年前の開園のねらい通り、花回廊は鳥取県の観光と花卉(かき)園芸の振興に大いに貢献してきています。夜の観光の目玉として、夏期には月明かりをイメージしたライトアップの「ムーンライトフラワーガーデン」を企画しています。
冬期には中国地方で最大級の規模を誇る「フラワーイルミネーション」を開催し、観光客を引き付けています。今後も、とっとり花回廊は、鳥取県の観光の目玉の一つとして大輪の花を咲かせ続けることでしょう。

11月中旬の開催に向けて、フラワーイルミネーションの準備が進められています。例年、1月中旬まで開催されます

とっとり花回廊の園内ガイドマップです
〈 追記 〉
先月、大阪関西万博が大盛況のもと無事に終了しました。私たちは高齢のリリーちゃんのお世話が必要なので、宿泊を伴う県外旅行をすることができません。残念ながら出かけることはできませんでした。ブログを読んでくださる皆様は、きっと万博に出かけて楽しまれたことでしょう。
余談ですが、万博のシンボルの“大屋根リング”が発表された時、私は「もしかしたら、設計者の方は花回廊をモデルにされたのかもしれないな」と、直感しました。
世界最大規模の木造建築物で、日本古来の伝統工法を取り入れた“大屋根リング”は歴史に残る建造物であることは間違いありません。だからこそ、全てを解体撤去するのではなく、“一部でも保存”することが決定したのです。
大屋根リングと花回廊には接点は全くないのかもしれませんが、鳥取県民の一人としては、「もしかしたら、そうだったのかも?」と、考えるだけで、なぜかうれしくなってしまうのです。

*梨楽庵から“とっとり花回廊”へは、車で1時間弱で行くことができます
