どこかで春が
梨楽庵

白梅は満開です。桜のつぼみもふくらんでいます。
どこかで春が生まれてる
どこかで水が流れ出す
どこかで雲雀が鳴いている
どこかで芽の出る 音がする
山の三月 そよ風吹いて
どこかで春が 生まれてる
作詞 百田宗治 作曲 草川 信
この歌は早春の歌として大変有名な童謡です。穏やかな陽光が大空を包む日には、この歌を口ずさむと、本当にどこかで春が生まれているような不思議な感覚に陥ります。

今冬は大雪だったので、谷川水が勢いよく流れています。
梨楽庵の農園で春の訪れをいち早く実感できるのは、1月下旬頃に蕗の薹(ふきのとう)を見つけたときです。雪深い年と暖冬の年では蕗の薹が顔を出すのに時間差がありますが、今年は大寒以降、3度も大寒波が襲来したため、2月下旬まで摘み取ることができませんでした。

収穫した日の夕食時には、妻に頼んで天ぷらと蕗の薹の味噌をつくってもらいました。熱々の天ぷらを口に入れると蕗の薹の独特のわずかな苦みの中に小さな春を感じ取ることができました。蕗のとう味噌も色鮮やかな緑色なので、熱々の真っ白いご飯にのせて食べると口の中に小さな春の広がりが感じられます。

梨楽庵の農園、梨楽園(リラックスエン)では、原木シイタケも栽培しています。農園は元々大部分が梨の果樹園だったのですが、父と母が高齢化したために、栽培面積の縮小を余儀なくされました。梨の木を伐採した後に、母がヒノキの植栽を行い、今では樹齢40年余りのヒノキ林になっています。

ヒノキの植栽のおかげで、ヒノキ林の環境がシイタケ栽培に適していることを知り、8年前に原木シイタケの栽培を始めました。出荷はしていませんが、2月下旬から3月下旬ごろの約1か月が収穫適期です。原木からシイタケの赤ちゃんが顔を出すと、小さな春の訪れを感じます。
さて、先週のことです。愛車の軽トラで果樹園に向かい、畑仕事に精を出していると、春を思わせるポカポカな陽気に誘われて、ヒノキ林の方から、「ホー、ホケキョ…。ケッキョ、ケッキョ」とウグイスの鳴き声が聞こえてきました。梨楽園では、一足早く、春が生まれているのです。
まだ初鳴きなので、鳴き声はたどたどしく、遠慮がちな声でした。初鳴きに呼応するように、雑木林の方からも「ケッキョ、ケッキョ」とお友だちのウグイスが合図を送っていました。野山に響き渡るウグイスの合唱は、私たちに元気を与えてくれるので、本格的な春の訪れが待ち遠しいです。
“彼岸過ぎての春の雪”という言葉があります。三月の下旬になっても突然の吹雪がやってきて、ようやく春がやってきた、と思っていたのに、一晩で真冬に逆戻りすることもあります。
“三寒四温”という言葉もあります。寒い日が三日ほど続いた後に、今度は暖かい日が四日ほど続く天気が繰り返されながら、この時期になると、しだいに冬から春へと季節が衣替えをしていくのです。
農家民宿「梨楽庵」の周辺では、まだまだ春の訪れは感じられません。ウグイスの声も聞こえてきません。でも、確かに、どこかで春は生まれているのです。もうすぐ、私たちが住む里にも、そよ風とともに春はやってくるのです。

この谷川水のおかげで、梨楽園では水不足の心配がないので、ここで農業ができるのです。
